伝わる上手な話し方 大勢に「話す」というスタンスで講演(プレゼン)は即失敗
2015/02/10
プレゼン(発表)、講演、スピーチは話者が聴衆に話しかけるものだと一般には考えられているようです。しかし、人はそもそも一方的な話にさらされるのは本質的に得意ではなく、そういう場に置かれると資料を眺めるなどして聞いているふりを始めてしまうことがあります。多数を相手にする場合の伝わる上手な話し方のコツを考えてみます。
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伝わる上手な話し方 大勢の人に話をするコツ
大勢の人に話をするときは話者から聴衆へ、1人から多数へという方向性になります。ただ、この当たり前のことを当たり前だと思ている限り、話し上手になるのは難しいかもしれません。
前述したように一方的に話を聞くというのは、すぐさま話に飽きることに直結してしまいます。伝わるも何も、話に飽きられてしまえば相手は別のことを考え始めてしまいますから伝わる話し方、上手な話し方という次元に至らないレベルとなってしまします。
大勢の人に話をするときは1人から多数へという方向性をイメージするのは固定観念、先入観に過ぎません。話し方というのは、意外なほど学校の授業の様子や先生の話し方がベースになっています。学校では約40人(最近は35人程度)を平穏に管理する以上、私語を抑えながら(多少の問いかけを入れつつも許可のない発話はさせず)ある程度一方的に話し続けるのがセオリーです。
しかし、これはあくまでも話し方のひとつに過ぎません。もっと多くの話し方の種類の中からその場に合った「上手な伝わる話し方」を選んでいけばよいのです。
上手な話し方ができるひとが絶対にしないこと
大勢に話を聞いてもらうときに、相手の人数によらずマス(全体としてカタマリ)として扱うというのは失礼な行為になります。
有名芸能人ならともかくですが、一介の専門家やましてや単なるプレゼンテンターとして人前に出るなら、相手の人数に依らず基本的には聴衆個々に対面する姿勢というのはきわめて重要です。
私自身の例を挙げると、聴衆が50人位なら開始前に全員の名字を確認し手許に座席表を作っておきます。時間がない場合は、最低限一番前に座っている方の名字程度は把握しておきます。さらに可能ならば数人でもよいので会話をしておくことも聴衆をつかむうえでかなり効果があります。
話し始めたらアイコンタクトととも言いますが一人一人順番によく見て理解度を確かめるように話を進めていきます。1対1でもうまく伝わらないことがあるのに、1対多で御座なりな態度をとるというのはかなりリスキーなこととなります。人数が多ければ多いほど慎重に1人1人をつかむように努力することは非常に大切です。
また指定席でない限り、最前列には熱心な人が座ることが多いので、指名すれば答えてくれることも多いです。よほど緊張感がある会場ならイエスノーで答えられる質問にしますが、あるていどくだけてきたら通常の質問をすることもあります。またレジメがある場合項目の終わりで質問はありますかと投げかけ、(たいてい挙手はありませんので)一番前の人に聞くのも効果的です。
私は以前にある人のビジネス研修会に参加したことがあります。講師は実績こそあげていましたがまだ話し慣れておらず、事前の計画に基づいて3時間ほど一方的に話し続けました。私は助け船を出すつもりで、途中の区切りで質問をしたのですが、時間が押していたのか少しむっとしてさっと解答を述べただけでした。
ほかの参加者もそれぞれ聞きたいことがあったはずです。講師からは後日メールでレベルに合っていなかった方もいたかもしれないと反省の弁が届きましたが、初めから計画を立てすぎず一人一人を見ながら話せばこんなことにはならなかったはずです。もちろんその講師の以降の講演会には参加していません。
伝わる上手な話し方 数百人でもなお対話可能性を残します
では聴取が数百人レベルの場合はどうすればよいのでしょうか。実は考え方はさほど変わらず、私の場合最前列の人の名前だけ把握していきます。相手方によりますがお互い名前を知っている集団なら、○○さんの列の前から5番目の方はいかがですか?という形で、仮に15列の場合でも15×5=75の計算で75人程度は対話可能性を残すことができます。
もちろんこの場合相手にはマイクがないので、Yes・Noで答えられる質問にしたり、物怖じさない感じがする人に絞り込んで意見を伺っていきます。とくに研修会のように相手が目下(年下)の場合、座席表を使って積極的に対話しながら話を進めるのは容易です。相手が目上の場合は、やりづらい点もありますが様子を見つつ雰囲気を見てやはりなるべく対話に持ち込みます(話好きそうな女性の方に伺うのがコツです)。
総じてしゃべりたくてうずうずしている感じの人からまずお話し願うのがコツです。そうすると普通の人やおとなしい人も、これは発言して良い雰囲気なのかと感じ取り、こちらが強調したいポイントで上手く質問が出ることがあります。
この手法をとると聴衆は突然何か聞かれるかもしれないという緊張感を持ち、驚くほど雰囲気が活性化することがあります。また自分がその他大勢と扱われていないという感覚も伝わりますので交流できたという満足感も双方に残ります。
相手方の名前など一切分からない場合や壇上に上がっており相手方の声が聞こえないので対話ができないということもあります。政治家の演説がそうなのですが、政治家は上述した本質をよく知っていますので必ず「○○ではないでしょうか?」と問いかけてきます。これは基本的には「そうだ」「その通り」で答えられる質問で上述のYes・Noで答えられる質問を駆使しているのです。
テレビ番組でひとりのタレントが30分や1時間話し続けることはありません。百戦錬磨のタレントですら、一方通行で聴衆を引きつけ続けることはできないからです。ましてや一介のプレゼンターが30分や1時間話し続けるというのは、ちょっとした思い上りと言われても反論できません。聞いている姿勢を取らせるだけなら、権力やマナーの力で実現は可能ですが、伝わる話し方というのは「伝わったふりをされる話し方」とは異なります。
一時間一方的に話し続けても聞いてもらえるチャンスは、恐らく「遺言」ぐらいです。タモリが笑っていいとも最終回で一時間話し続けたとしても、視聴者はよく聞いたでしょう。ただ、逆に言えば話し上手のタモリですらそれが通るシチュエーションは最終回くらいです。
聴衆をマスで把握しない。個々に対応する。人数が増えても汗だくになりひとりでも多くの人を把握するように頑張る。この姿勢が聴衆に伝わったとき、多くの拍手が自然に起きてきます。
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