伝わる上手な話し方 タモリに学ぶ「気配の消し方」
2015/02/10
ボクシングの全国大会で優勝した生徒がいる高校で講演をしたことがあります。対象の学年でなかったため直接会うことはできませんでしたが、一見いわゆる草食系でこの人だと言われなければとても見つけ出すことができない大人しそうな生徒だそうです。普段は甘いものが好きで釣りが趣味のごく普通の高校生であるようです。
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ボクシングで本当に強いということ
ボクシングチャンピオンというと体中から有り余る体力と闘志がオーラのように伝わってくる。そのようなイメージを持つかもしれません。ただ、考えてみるにボクシングで本当に強いということは、常に冷静に相手の動きを観察することができるこころの強さを持つことなのかもしれません。
並大抵の選手であれば、恐らく音を立てて燻ぶるようなオーラがあるのではないでしょうか。しかし、全国でトップに立つということはそういうレベルではないということです。
営業やコミュニケーションで本当に強いということ
以前、日本が好景気のころは押しが強く個性的な営業マンが強かったと言われています。街なかの商店に目をやっても、例えば一昔前の町の電気屋さんはかなりの権力者だったようです。台数に限りがある新型のカラーテレビをどのお得意さんに紹介するかは電気屋さんの気持ち次第。こういう時代はアクの強い店員さんが通用したのです。
しかし時は流れ、家電製品は珍しくなくなり特売で行列ということもなくなりました。そして、面倒な店員とのやり取りをしなくて済む郊外型の量販店が隆盛を迎えます。アクの強い店員さんは裸の王様になり店じまいです。
現在トップ営業マンと言われている面々は、例外もありますが気配を消すことを得意としています。実際に会ってみても、ベテランほどいるかいないか分からなくなるような「気配の消し方」を心得ています。一昔前の営業マンはもう少し存在感のある個性派が多かったのですが、いまは全産業が完全に顧客有利のバランスに移り変わっていますので変化が起きているのです。
芸能界に目を転じてみても、気配の消し方を心得ず常に存在と自己を主張してよいという人は本当にわずかです。和田アキ子、明石屋さんま、島田紳助くらいのものではないでしょうか?BIG3と言われる明石屋さんま、ビートたけし、タモリのなかでも、タモリはもともと強力な「気配の消し方」を心得て今すし、ビートたけしも最近はそういう場面が増えています。
注目したいのは、理由こそ異なりますが看板番組を辞めた島田紳助とタモリのその後です。島田紳助は芸能界を引退しましたが、予想外に視聴者からのカムバックの声は少ないようです。これは例え芸能人という特殊な存在であっても、やはり気配を消せない存在感が強烈なタイプは案外敬遠されているということです。一方のタモリは笑っていいともを降ろされてしまいましたが、視聴者に残念がる声が多くCMにも登場しています。
「この惑星のテレビはタモリがいないと寂しい」
芸能界をよく観察してみると、気配を消さず相手が威圧感を感じるほどのオーラを出し続けてよいのは圧倒的な権力者であることに気づきます。和田アキ子は芸能界のご意見番とも言われるように強い権限を持ち、そろそろ紅白から降ろしたいNHKですら逆らえないといわれています。和田アキ子に気に入られれば芸能界で活路が開けるわけですから、従う人が多く威張っていて当然なのです。しかしこういった大物はほんの一握り。よく観察していれば「気配の消し方」を心得ている芸能人が圧倒的多数です。
実際のビジネスの世界でも、社長でも役員でもないのに「気配の消し方」を心得ておらず自己主張が激しい人はいつか消えていきます。社長や役員ならば多少威張っていても、給与や人事権を持っており与えるものがありますのでまだ通用するのですが、広範な給与決定権や人事権がないのに気配を消せない部課長クラスは必ず敵を作っています。その人の生計を支えるほどの裁量がなければ自己を押し通す権限はないのです。
そして社長役員クラスであっても、もはやもっとも嫌われている経営者とも言えるワタミ創業者の渡邉美樹氏と、社員を立てることで有名なホンダの創業者本田宗一郎を比較すればどちらが望ましいかは一目瞭然です。
いま、伝わる上手な話し方とは?
今の時代は全産業で顧客有利の時代です。地方ではまだまだ強気の接客も見られますが、徐々に近所にできた都市型の接客の店に押されて変容を求められたり、経営が立ち行かなくなったりします。
営業マン時代、河口湖に行ったときに少し奮発してビジネスホテルでなく旅館を予約したことがあります。事前に申請してあったのですが夜遅く着きました。そしていつものようにカード払いしようとすると、カードは使えないとのこと。現金は切らしていたので、では下ろしてきますと車でコンビニエンスストアを探しに出ました。
ただ少し前の話で、どのコンビニもATMは営業していませんでした。汗だくで戻ってきてとさきほどのフロントの女性にATMがどこもやっていなくて明日の朝でも大丈夫ですかと聞くと、「ATMはやっていませんよ。どこかに当てがあるのかなと思って見ていましたが」と言うのです。つまり初めから近所のコンビニではその時間はお金を下ろせないと知っていたということ。さすがに呆れて、宿を変えましたが「ああそうですか」という対応。これでやっていけたのが昔のビジネスです。
その旅館つぶれたかなと思い調べたら、生き伸びていました。ただ口コミを見ると富士山が見える部屋を予約したのに富士山が木の陰からほんの少ししか見えない部屋を当てられ、挙句の果てに出発時にロビーでバスの時間まで待機していたら、「貸し切り客がいるので用が済んだら出ていってほしい」と言われお年寄りも含め炎天下でバスを待ったとの口コミがありました。全然変わっていません。しかし、このような立地の良さや施設で持っているサービス業は間もなく消えていくはずです。
さて、話がそれましたが、今は基本的に顧客有利の時代です。こういう時代に伝わる話し方というのは、基本的には「気配の消し方」を心得ること、相手をよく理解することが大切になると思います。
恐らく営業の全国チャンピオンも、ボクシングの全国チャンピオンも、電車で隣に座っていても気づかない。そういう時代になっています。これは営業や普段づかいのコニュニケーションのみならず、営業、講演、スピーチなど話すことすべてに通用する伝わる上手な話し方のコツなのです。
伝わる上手な話し方のコツまとめ
・顧客有利の雰囲気が全国、全世代に浸透しつつあります。
・そのときに「伝わる話し方」「上手な話し方」というのは、気配の消し方を心得え、相手に居心地の良さを感じさせる技術です。
・相手を殺してしまうようなアクの強さよりも、ミネラルウオーターのような柔軟性と臨機応変の姿勢が必要です。
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